2025年夏。ずっとバイクに乗りたい衝動に駆られていたけれど、36度を超え続ける気温のせいで、なかなかガレージに足が向かなかった。9月になってもそんな日が延々と続く。やっと気温が下がってきたと思ったら、今度は秋雨前線に青空を阻まれる。一日の大半は晴れているのに、線状降水帯が現れては、数時間ほどの豪雨をもたらす日々。
結局、走ることが出来たのは9月の後半になってからだった。5月に車検を取ったきり、一度も乗っていないバイクはすっかり埃を被ってしまっていた。ガレージからBMWを引っ張り出すと、水道の前に停めて水をかけながら、手のひらで汚れを落とすようにボディを撫でる。
西に向かって走り出すとすぐに渋滞にハマった。今日は日曜日だから、福岡ドームで何かイベントをやっているのだろう。暫く車列が動かないことを確かめると、Uターンをして一つ手前の天神北インターを目指す。都市高速のETCゲートを抜けると海沿いの高架橋。不意に強風に煽られて、冷や汗が出た。どうやら今日は風が強い日の様だ。その後も高架の上では、強い横風が吹き続けていた。
細い県道を使って山道を上る。路面はうっすらと濡れていて、所々に緑の苔が浮かんでいた。ボタンを押して、走行モードをROADからRAINに切り替える。佐賀県境の看板を過ぎると道は下り坂になった。少しこわばったカラダがリーンの邪魔をしているのが分かる。同じ勾配で同じ半径のカーブなのに、怖いと思う道があるのは何故だろう。別の場所ならもっと急な下り坂を速い速度で駆け降りることができるというのに、この辺の道はうまく走れない不思議。
先週まで暑かった筈なのに、すっかりと夏は終わっていた。時折金木犀の香りが混じる秋の空気を感じて驚いてしまう。まだ早いよと思いながら、夏の道を堪能していないことを残念に思う。暑くもなく寒くもない快適な青空の道を走っていると、いつかの記憶が蘇る。同じ気温、同じ香りがした古いツーリングの思い出。
実はそろそろBMWに乗るのはやめて、ロードキングを復活させようと考えていた。理由は、もうスピードなんて出せなくなっているかもしれないと思っていたから。目を三角にしてコーナーを攻めるよりも、ノンビリ下道を走る方が気楽で楽しそうに思えてきたのだ。しかし実際に山へ上ってみると、いつもと変わらずハイペースで走ることができてしまった。もう飽きたかもしれないと思っていた道にも高揚してしまった。このバイクは大したテクニックなんてなくとも、安全にリラックスしたままハイスピードで走れるマシンだったのだ。
緑のワインディングロードを3速固定で駆け抜ける。ドライブシャフトで駆動するK1600Bは、アクセル開度に応じてスピードが落ちるから、あまりブレーキ操作を必要としない。アクセルはオンオフではなく、20段階くらいあるつもりで細かく操作すると良く走る。図太いはずの排気音はいつのまにか聞こえなくなっていて、風が流れる音だけになっていた。
脳内に走りたい道リストを表示して、上から順番に接続する様にルートを考える。但し、今日は今年初めての走行なので、距離は少し控えめにしよう。まだ走り足りないな、と思う程度にして帰ることがきっと次につながる筈なんだと、自分に言い訳しながら少し早めに帰路につく。














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